預り金・実費の記録のつけ方
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預り金の記録簿には、日付、事件、入金か出金か、相手、金額、残高、証憑(領収書や振込明細)を1行ずつ書きます。預り金は事務所の口座と分けた預り金口座に置き、実費は立て替えたものと預かったものを分けて精算します。記録の根拠になる弁護士職務基本規程と日弁連の規程を確認しながら、事務員がつける記録簿の形を書きます。
事務員向け
預り金・実費の記録のつけ方
記録簿の欄、口座の分け方、実費の立替と精算
預り金の記録は、規程で求められている
弁護士職務基本規程38条は、事件に関して依頼者、相手方その他の利害関係人から金員を預かったときは、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にする方法で保管して、その状況を記録しなければならないと定めています。39条は、書類その他の物品を預かったときは、善良な管理者の注意をもって保管するよう求めています。
日弁連の「預り金等の取扱いに関する規程」は、もっと具体的です。預り金は預かった目的以外に使ってはならず(2条)、預り金だけを管理する専用の口座を開設します(3条)。預り金口座の口座名義には、「預り金」などの預り金口座であることが分かる文字を使います(3条3項)。入出金の年月日と金額、入金の目的と出金の使途を記録し(7条1項)、その記録は職務が終了した後3年間保存します(7条2項)。依頼者から請求があったときと職務が終了したときは、入出金の概要を書いた書面で収支を報告します(8条)。
この規程は2025年6月13日の定期総会で一部改正され、預り金口座の名義を会員本人名義とすること(他人名義を使える場合は所属弁護士会への届出が必要)や、弁護士会による照会・調査の範囲の拡大などが定められました。これらの改正規定は2026年6月1日に施行されています。口座の名義や届出の細目は弁護士が決めることなので、事務員は、事務所の預り金口座がどの口座で、名義がどうなっているかを知っておけば十分です。
図解 2
記録簿に書く7つの欄
- 日付(入金日・出金日)
- 事件(事件名または事件番号)
- 入金か出金か
- 相手(誰から預かり、誰に払ったか)
- 金額と目的・使途
- 残高(事件ごと)
- 証憑(領収書、振込明細、預り証の控え)
記録簿に書く7つの欄
規程が求める記録は、入出金の年月日、金額、入金の目的、出金の使途です。事務員が記録簿をつけるときは、これに「事件」「相手」「残高」「証憑」を加えた7つの欄を作ると、後から見返しやすくなります。
事件の欄は、事件ごとに残高が追えるようにするためのものです。預り金は事件ごと、依頼者ごとに分けて記録し、他の事件の預り金とまとめて1行にしません。入金の目的には「着手金」「報酬金」「訴訟費用の実費」「示談金の預り」など、何のための金員かを書きます。出金の使途も、「印紙代」「予納郵券(5月20日までに提起された事件)」「依頼者への返還」と具体的に書きます。
残高は、1行入力するたびに事件ごとの残りを書きます。月末にまとめて計算するやり方では、間違いに気づくのが遅れます。証憑の欄には、領収書や振込明細の保管場所と、書類の名前を書いておきます。紙で保管するならファイル名ではなく棚の位置を、PDFで保管するなら共有フォルダの置き場所を書きます。
預かったときは、依頼者への通知と預り証の発行も規程に定められています(5条・6条。口座振込みで受け取った場合の預り証は、依頼者の請求があったときに限ります)。記録簿には、通知や預り証を出した日も書いておくと、出し忘れに気づけます。ただし、通知や預り証の文面、収支報告書の内容は弁護士が確認するものなので、事務員は下書きと控えの整理を受け持つ形が現実的です。
預り金口座と事務所の口座を分ける
預り金は、事務所の運営費や弁護士の報酬が入る口座と分けて、預り金専用の口座で管理します。依頼者から着手金と実費をまとめて振り込まれたときも、着手金は事務所の口座に移し、実費の預り分は預り金口座に残します。移した日と金額は、記録簿の出金と入金の両方に書きます。
預り金口座で保管する金額にも基準があります。一つの事件または一人の依頼者について預り金の総額が50万円以上になり、14営業日以上保管するときは、そのうち50万円以上の額を預り金口座で保管しなければなりません(預り金等の取扱いに関する規程4条2項)。少額の実費の預りは、この基準に満たないことがありますが、記録簿には同じように残します。
事務員が気をつけたいのは、振込を受けたときに「どの口座に入ったか」と「何の金員か」を確認することです。依頼者に振込先を案内するときは、着手金と実費の預りを分けて案内するか、同じ口座に入った場合は事務所の中でどう区分するかを、弁護士と決めておきます。報酬金を預り金から受け取る場合も、依頼者への説明と収支の整理は、弁護士の指示に従って進めます。
図解 3
預り金が入ってから精算までの流れ
実費の立替と精算は、預り金と分けて残す
実費には、収入印紙、交通費、謄本や証明書の取得費用、郵送料などがあります。2026年5月21日以後に提起された事件の特定申立てでは、郵便料は申立手数料に含まれ、予納郵券は要りません。当初の訴えの提起が5月20日までの事件では、予納郵券を従来どおり記録します。依頼者から先に実費の預りを受けて、そこから支払うやり方と、事務所が先に立て替えて、後で依頼者に請求するやり方があります。どちらの場合も、事件ごとに「いくら使ったか」が分かる記録を残します。
預りから支払うなら、預り金の出金として記録します。立て替えたなら、事務所の支出として記録し、依頼者への請求の欄に請求日と入金日を書きます。同じ実費を、預りと立替の両方に二重に載せないよう、支払いごとに「どちらから出したか」を記録します。支払先の領収書は、受け取ったその日に事件のファイルに綴じます。まとめて整理するつもりで放置すると、領収書が足りなくなります。
支払いの記録には、領収書の宛名と但し書きも確かめます。宛名は事務所または依頼者のどちらにするかを事務所で決めておき、但し書きは「印紙代として」のように用途が分かる形にしてもらいます。現金で立て替えたときは、その日のうちに、金額と支払先をメモして領収書に添えます。
精算は、事件の終了時と、事件が長引く場合は節目ごとに行います。職務基本規程45条は、委任の終了に当たり、委任契約に従って金銭を清算したうえで、預り金と預り品を遅滞なく返還することを求めています。預りが余ったら返還し、足りなければ追加の請求を弁護士に相談します。残額と使途の内訳を一覧にして弁護士に渡せば、収支報告の元にできます。
図解 4
預りから支払う場合と立て替える場合
| 観点 | 預りから支払う | 事務所が立て替える |
|---|---|---|
| 記録する場所 | 預り金の記録簿(出金) | 事務所の経費。依頼者への請求欄に請求日を書く |
| 領収書 | その日のうちに事件のファイルへ | 同左 |
| 精算 | 余りを返還、足りなければ弁護士に相談 | 請求し、入金日を書く |
| 二重計上の防ぎ方 | 支払いごとに「預りから」と書く | 支払いごとに「立替」と書く |
図解 5
事務員がつまずきやすい場面
規程の確認先と、毎月の見直し
記録簿の形は、事務所によって違って構いません。確認すべきなのは、日弁連の「預り金等の取扱いに関する規程」の条文と、所属弁護士会からの案内です。運用で迷うことがあれば、弁護士を通じて所属弁護士会に確認してもらいます。依頼者の本人特定事項の確認と、確認記録の保存(資産管理行為等または取引等の終了後5年間)は、「依頼者の本人特定事項等の確認及び記録保存等に関する規程」が別に定めています。どの場合に確認が必要かは弁護士が判断します。会計や税務の処理は、顧問税理士に確認してください。この回では扱いません。
毎月の見直しは、預り金口座の通帳(またはネットバンキングの明細)と記録簿の残高を突き合わせることから始めます。一致しなければ、その場で原因を探します。事件が終わったのに預りが残っているものがないかも、同時に見ておきます。
預り金の処理を先送りすると、取り返しがつかなくなることがあります。独立開業の準備としての預り金口座の考え方は弁護士が独立するとき、最初に決める7つのことでも触れています。
Atrium Legalの案件管理は、経費・報酬・入金・預り金を案件ごとに記録できます。未請求・未入金の絞り込みで請求漏れを防げ、請求書のPDFから金額と支払期限を取り込めます。金額の管理や削除といった操作は、弁護士・事務局などの役割ごとに権限を決められます。ただし、預り金口座の名義や届出といった規程上の手続を代わりに行うものではありません。記録を案件ごとにそろえる道具として使います。

この記事の監修者
弁護士 横田 秀俊
福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所
Atrium Legalは、弁護士 横田秀俊の監修のもとで設計・開発されています。法律事務所の現場で必要とされる機能と操作感を確かめながら、弁護士と事務スタッフの双方が使いやすいツールを目指しています。監修について
※ 弁護士法人横田秀俊法律事務所と、Atrium Legalの販売元(株式会社HMコンサルティング)は別の法人です。
参考にした法令・資料
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この記事は、2026年10月時点の法令・公表資料をもとにした一般的な解説です。個別の事案の判断は、事案の内容に応じて行ってください。