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弁護士事務所の業務効率化に役立つ情報をお届けします。案件管理や利益相反チェックなど、日々の実務で使えるトピックを掲載しています。

戸籍・住民票の職務上請求 事務員が押さえる手順と注意点

監修弁護士 横田秀俊監修 弁護士 横田 秀俊(福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所)監修者について

弁護士は、受任している事件の業務に必要なときに限り、職務上請求で戸籍謄本や住民票の写しを取り寄せられます。窓口へ行く、郵送で請求するといった作業を事務員が受け持つ事務所は多いのですが、請求できるのは弁護士で、記入内容と用紙の管理の責任も弁護士にあります。2024年3月1日に始まった戸籍証明書の広域交付と、戸籍電子証明書提供用識別符号は、職務上請求では使えません。条文で確かめた範囲の手順と、事務所で決めておく管理を書きます。

事務員向け


戸籍・住民票の職務上請求

事務員が押さえる手順と注意点

Atrium Legal コラム1 / 5

職務上請求ができるのは、受任している事件の業務に必要なとき

戸籍は、本人、配偶者、直系の親族が請求するのが原則です(戸籍法10条1項)。それ以外の人は、自分の権利の行使など、同法10条の2第1項が定める場合に限られます。弁護士には特別の定めがあります。弁護士は、受任している事件または事務に関する業務を遂行するために必要があるとき、戸籍謄本等の交付を請求できます(10条の2第3項)。このとき、資格、業務の種類、依頼者の氏名、依頼者が戸籍の記載事項を確認する理由を明らかにします。

裁判手続や裁判外の紛争処理手続の代理業務のために請求する場合は、第4項が使われます(10条の2第4項)。明らかにするのは、資格、事件の種類、代理する手続、戸籍の記載事項の利用目的で、依頼者の氏名は含まれません。刑事弁護人などの業務は第5項に別に定められています。どの項で請求するかは、弁護士が決めます。事務員は、事件の種類と手続を弁護士に確認してから用紙に書き始めます。

条文の文言は「受任している」です。受任の前の相談段階で、職務上請求の用紙を使ってよいかは、必ず弁護士に確認します。

住民票の写しも考え方は同じです。弁護士などの特定事務受任者は、受任している事件の依頼者が、自己の権利を行使するために住民票の記載事項を確認する必要がある者などに当たることを理由に、交付を申し出ることができます。市町村長が相当と認めたときに交付されます(住民基本台帳法12条の3第2項)。申出では、申出をする人の氏名と住所、対象者の氏名と住所、利用目的、資格と業務の種類を明らかにします。依頼者の氏名は、紛争処理手続の代理業務のためなら不要です(同条4項)。戸籍の附票や住民票の除票も、同様に弁護士が申し出られます(同法20条4項、15条の4第4項)。

図解 2

請求から記録までの流れ

1受任の確認受任している事件か、弁護士に確認する
2用紙の記入対象者・書類の種類・目的を書き、弁護士が内容を確認する
3職印弁護士の職印が押された用紙で請求する
4窓口か郵送本籍地・住所地の自治体へ。方法は自治体の案内に従う
5請求の記録台帳に書き、取得した書類を事件記録へ
Atrium Legal コラム2 / 5

窓口に出る事務員は、統一請求書・職印・写真付きの証明書類をそろえる

窓口での確認の方法は、戸籍法施行規則11条の2第4号に書かれています。職務上請求(戸籍法10条の2第3項から第5項)の場合は、運転免許証などの本人確認書類か、弁護士等の事務を補助する者であることを証する書類で写真を貼ったものを示します。そのうえで、弁護士等の所属する会が発行した統一請求書に、弁護士の職印が押されたもので請求します。住民票の写しの申出も、住民基本台帳法に基づく総務省令に同じ定めがあります(同省令11条2号)。

事務員が窓口に行くときは、本人確認書類を持ちます。事務を補助する者であることを証する書類として何を使うかは、所属弁護士会の案内で確認します。職印が押されていない用紙や、記入が途中の用紙を持たせるのは避けます。窓口で内容を聞かれたとき、事務員が答えられるよう、事件の種類と請求の目的を弁護士から聞いておきます。

郵送で請求するときは、送付先に弁護士の事務所の所在地を指定します(戸籍法施行規則11条の2第5号ハ。住民票は総務省令11条4号)。手数料の額、定額小為替などの支払方法、返信用封筒の要否は自治体ごとに異なります。請求先の自治体のページを見て、そのとおりに用意します。

広域交付と識別符号は使えないので、本籍地へ請求する

2024年3月1日に始まった広域交付は、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書を請求できる制度です。ただし、条文で対象になっているのは、本人、配偶者、直系尊属・直系卑属の請求(戸籍法10条1項)と、市町村の機関の請求(10条の2第2項)だけです(120条の2第1項)。弁護士の職務上請求(10条の2第3項から第5項)は入っていません。自治体の案内にも、広域交付では「職務上請求はできません」と書いているものがあります。法務省の案内も、郵送や代理人による請求はできないとしています。

戸籍電子証明書提供用識別符号も同じです。これは、広域交付で請求した人に発行される、有効期限3か月のパスワードで、マイナポータルからの行政手続で戸籍証明書の添付を省くために使います。条文上の対象は、広域交付による本人等の請求と、市町村の機関が法務省令で定める事務のためにする請求です(120条の3)。職務上請求の事務で、識別符号の発行を受けることはできません。

そのため、職務上請求は本籍地の市区町村に、窓口か郵送で請求します。相続人の調査のように、現在の戸籍から過去へさかのぼる場合は、本籍地が変わるたびに別の自治体へ請求することになります。除籍や改製原戸籍は、戸籍法12条の2により、10条の2の規定が準用されます。

図解 3

本人等の請求と職務上請求の違い

観点 本人・配偶者・直系親族 弁護士の職務上請求
広域交付(2024年3月1日〜) 本籍地以外の窓口でも請求できる 使えない。本籍地へ請求する
識別符号 広域交付の請求で発行を受けられる 職務上請求は対象外
請求の書式 自治体の請求書 所属する会が発行した統一請求書に職印
郵送の送付先 請求者の現住所など 弁護士の事務所の所在地
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住民票は、記載される事項に限りがある

職務上請求で交付される住民票の写しは、原則として基礎証明事項だけが表示されます。基礎証明事項は、氏名、出生の年月日、男女の別、住民となった年月日、住所、届出の年月日と従前の住所です(住民基本台帳法12条の3第1項、7条)。世帯主との続柄や本籍(戸籍の表示)は含まれません。利用の目的を達成するために必要なら、申出の際にそれらも必要だと申し出ます(12条の3第7項)。

個人番号と住民票コードは、申し出ても表示されません(同項の括弧書き)。取得した住民票の写しに、これらの記載がないのは正しい状態です。本籍や続柄が必要かどうかは事件の種類によって変わるので、用紙に書く前に弁護士に確認します。

用紙の管理と請求の記録は、事務所の決まりにする

日本弁護士連合会は、「戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則」を定めています。条文の細目は、日弁連の原文と所属弁護士会の案内で確認してください。2006年に日弁連が公表した意見は、当時の同種の規則の内容として、用紙を職務外に使わないこと、依頼者を含む第三者に譲渡・貸与しないこと、不実の記載をしないこと、盗難や紛失を防ぐために適切に管理することを挙げています。

不正な請求には、刑事罰の定めがあり、弁護士会の懲戒の対象にもなります。偽りその他不正の手段で戸籍謄本等や住民票の写しの交付を受けた人は、30万円以下の罰金に処されます(戸籍法135条、住民基本台帳法46条2号)。弁護士は、弁護士法56条1項により、品位を失うべき非行があれば懲戒を受けます。依頼者や知り合いの頼みでも、受任している事件の業務に必要でない請求には、用紙を使いません。判断に迷う請求は、事務員が1人で決めず、弁護士に相談します。

事務所では、請求のたびに台帳に記録します。請求日、事件、対象者、書類の種類と通数、請求の項(第3項か第4項か)、用紙の番号があればその番号、請求した人、弁護士の確認、手数料と郵送費を書きます。用紙と職印は、別々の鍵のかかる場所に置きます。取得した戸籍や住民票は、請求の目的となった事件の記録にだけ入れ、ほかの事件に使い回しません。

図解 4

請求台帳に書く項目

日付と事件請求日、事件名、担当の弁護士
対象と書類対象者、戸籍・住民票などの種類、通数
請求の根拠戸籍法10条の2の第何項か。利用の目的
用紙用紙の番号(番号がある場合)。使い損じも記録
請求した人事務員の名前、弁護士の確認
費用手数料、郵送費。事件の経費として記録
Atrium Legal コラム4 / 5

取得した戸籍や住民票の氏名と住所は、あとで利益相反チェックにも役立ちます。旧字体や異体字を含む正しい表記が分かるからです。Atrium Legalの利益相反チェックは、氏名・住所・電話番号を入力して過去の案件と照合し、漢字・カナ・異体字の表記ゆれも正規化して照合します。また案件管理ツールでは、事務チャットで案件ごとに連絡を残し、「誰が・何を・いつまでに」を決めた作業依頼を出せるので、請求の依頼と取得の報告を案件にひも付けられます。経費も案件ごとに記録できます。

図解 5

請求前の確認

  • 受任している事件か、弁護士に確認した
  • 請求の項(第3項・第4項)を弁護士が決めた
  • 記入内容を弁護士が確認し、職印が押されている
  • 事務員の本人確認書類を持った
  • 本籍地の自治体へ請求する(広域交付は使えない)
  • 手数料と郵送の方法を自治体の案内で確認した
  • 台帳に記録した
Atrium Legal コラム5 / 5
監修弁護士 横田秀俊

この記事の監修者

弁護士 横田 秀俊

福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所

Atrium Legalは、弁護士 横田秀俊の監修のもとで設計・開発されています。法律事務所の現場で必要とされる機能と操作感を確かめながら、弁護士と事務スタッフの双方が使いやすいツールを目指しています。監修について

※ 弁護士法人横田秀俊法律事務所と、Atrium Legalの販売元(株式会社HMコンサルティング)は別の法人です。

参考にした法令・資料

この記事は、2026年10月時点の法令・公表資料をもとにした一般的な解説です。個別の事案の判断は、事案の内容に応じて行ってください。手数料や郵送請求の手順は自治体ごとに異なるため、請求先の案内も確認してください。

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