民事裁判のIT化で事務員の仕事はどう変わるか
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民事裁判のIT化は、2022年の法改正(令和4年法律第48号)で決まり、段階を踏んで進みました。2023年3月からウェブ会議が使えるようになり、2026年5月21日に全面施行されました。事務員の仕事で最も変わるのは、書類の提出と送達の受け取りです。弁護士などの訴訟代理人は、裁判所のシステム「mints」でのオンライン提出が義務になっています。この記事では、施行日と、事務の流れが変わる場所を整理します。
事務員向け
民事裁判のIT化と事務員の仕事
施行日の整理と、提出・送達・記録の変わり方
改正は4つの時期に分かれて施行された
民事訴訟法等の一部を改正する法律は、2022年(令和4年)5月に成立しました。法務省の案内では、施行は次の順に進みました。
2023年(令和5年)3月1日から、当事者が裁判所に出頭せず、ウェブ会議や電話会議で弁論準備手続や和解の期日に参加できるようになりました。2024年(令和6年)3月1日からは、当事者の一方または双方がウェブ会議で口頭弁論の期日に参加できます。人事訴訟・家事調停では、2025年(令和7年)3月1日から、ウェブ会議を使った離婚・離縁の和解や調停の成立などもできるようになりました。裁判所の案内では、口頭弁論や争点整理の手続へのウェブ会議での参加は、裁判所が相当と認めるときに認められるとされています。
そして2026年(令和8年)5月21日に、オンラインでの提出、システム送達、訴訟記録の電子化を含む改正法が全面施行されました。ここまでの期日の事務は、ウェブ会議の接続や日程の調整が中心でした。全面施行後は、書類を出す、受け取る、記録を見るという日々の事務そのものが変わります。
図解 2
施行日の流れ
2026年5月21日から、書類の出し方と受け取り方が変わった
オンライン提出とmints
改正民事訴訟法の下では、誰でも裁判所のシステムを使って、オンラインで訴えを提起し、準備書面を出せます(132条の10第1項)。この提出に使うのが、民事裁判書類電子提出システム(mints)です。裁判所の案内では、2026年5月21日以降に申立てがされた事件は、mintsの利用が原則で、委任を受けた弁護士・弁理士などの訴訟代理人は利用が義務付けられます。5月20日までに申立てがされた事件は、当事者双方に訴訟代理人がいて、双方が利用を希望するときだけmintsを使えます。控訴や抗告の事件は、原審の申立て日が基準です。
証拠も、書証の写しに代わる画像情報(PDF形式)をオンラインで出せます。相手方から書面を直送されたときの受領書も、2026年5月21日以降の事件ではmintsで出します。この受領書は、FAXや郵送では原則として出せません。
電子納付と、送達のオンライン化
申立手数料は、これまで収入印紙を貼って納めていました。オンラインでできる申立て(訴えの提起など、民事訴訟費用等に関する法律の「特定申立て」)の手数料は、現金で納めるのが原則です(同法8条1項)。裁判所の案内では、納付の方法はペイジーによる電子納付です。収入印紙で納められるのは、書面で申立てができる場合で、やむを得ない事由があるときに限られます。特定申立てでは、郵便料に充てる費用を予納する必要もありません(同法11条ただし書)。裁判所の案内も、郵便費用は申立手数料に一本化されたとしています。金額は裁判所の手数料早見表で確かめます。
送達は、オンラインで送達を受ける旨を届け出ると、裁判所書記官がシステムに裁判書類をアップロードし、システムに登録したメールアドレスに通知が届く形で行われます(109条の2)。送達の効力が生じるのは、次の3つのうち最も早い時です(109条の3第1項)。システムで書類を閲覧した時、ダウンロードした時、通知が発せられた日から1週間を経過した時です。開いていなくても、1週間たてば送達されたことになります。自分の責めに帰することができない事由で閲覧やダウンロードができない期間は、この1週間に数えません(同条2項)。
オンラインで訴えを提起した当事者や、オンラインで送達を受ける当事者は、基本的に、システム上の記録をいつでも閲覧・ダウンロードできます。
図解 3
これまでと全面施行後
| 場面 | これまで | 全面施行後(2026年5月21日以降の事件) |
|---|---|---|
| 書類の提出 | 郵送、FAX、持参 | mintsで提出(訴訟代理人は義務) |
| 申立手数料 | 収入印紙 | 原則ペイジーで電子納付 |
| 送達のための郵便費用 | 別に予納 | 申立手数料に一本化 |
| 裁判書類の送達 | 郵便など | システム送達と通知メール |
| 記録の閲覧 | 裁判所で記録を見る | システム上で閲覧・ダウンロード |
事務員の仕事が変わる4つの場所
1つ目は、提出の作業です。弁護士が書面を確定したあと、PDFにして、mintsにアップロードする作業は事務員が担うことが多くなります。証拠のPDFは、ファイル名と号証の番号を揃えておくと、提出と確認が楽になります。出す前に、提出する書面と添付資料の組み合わせを、弁護士が最終確認できる形にします。FAXの送信票や郵送の控えに代わる、提出の記録も案件に残します。
2つ目は、送達の通知メールの確認です。通知から1週間で送達の効力が生じるので、メールが誰にも読まれない期間が長いほど、期限の管理が危うくなります。システムに登録するメールアドレスを誰が見るか、担当者が休みの日はどうするかを決めておきます。通知を見たら、書類の名前、通知を受けた日時、システムで開いた日時を案件の記録に書きます。送達の効力が生じた日を記録しておくと、期間を数える出発点を弁護士と確かめるときに使えます。数え方は期日・期限を落とさない管理の仕組みで、期間の計算は期間計算ツールで確認できます。
3つ目は、費用の処理です。オンラインでできる申立ての手数料は、収入印紙の購入からペイジーでの納付に変わりました。納付した日付と金額を、案件の経費として記録します。郵便費用の予納が不要になるのは、2026年5月21日以後に提起された事件の特定申立てです。当初の訴えの提起が5月20日までの事件では、これまでどおり予納と精算の事務が残ります。
4つ目は、ウェブ会議の準備です。期日に接続できる機器、場所、接続の確認を、前日までに済ませます。依頼者が自宅などから参加する場合の手順は、事前に弁護士と決めておきます。
図解 4
事務員が決めておくこと
- mintsで提出する担当者と、最終確認をする弁護士
- システムに登録するメールアドレスと、通知を見る人
- 通知を見たときに記録する項目(書類名、日時)
- 申立手数料の納付日と金額の記録先
- ウェブ会議の接続確認の日と担当者
- 古い事件と新しい事件の見分け方
Atrium Legalの案件管理ツールでは、カレンダーに期日や予定を登録し、「誰が・何を・いつまでに」を決めた作業依頼を案件にひも付けて出せます。送達の通知を見たら、書類名と日時を案件の記録に書き、必要な作業を作業依頼にしてToDo一覧で追う、という使い方ができます。経費は案件ごとに記録できるので、申立手数料の納付も同じ場所に残せます。メールやスマートフォンへの通知の機能はないため、裁判所のメールを確認する担当者は、事務所の運用で決めてください。
古い事件と新しい事件が並ぶ期間と、新システムTreeeS
オンラインで訴えを提起し、オンラインで送達を受けられるのは、全面施行以後に提起された訴え等に限られます。それ以前に提起された訴えは、引き続き書面で審理し、送達を受けます。しばらくは、同じ事務所に、mintsで進む事件と、紙とFAXで進む事件が並びます。案件の記録に「2026年5月21日より前に提起」「以後に提起」の区別を付けておくと、提出方法を間違えません。
民事執行の手続は、遅くとも2028年(令和10年)6月までに全面デジタル化される予定で、現時点では書面での申立てが必要です。強制執行を申し立てるときは、全面施行後に提起された事件では、債務名義の正本に代えて、その記録事項証明書を出します。債務名義等の事件特定情報を書面で提供すれば、証明書の提出は省略できます。
システムの名前も変わります。裁判所は、名古屋地方裁判所(支部を含む)とその管内の簡易裁判所、名古屋高等裁判所本庁、最高裁判所で、2027年(令和9年)1月4日から、新たなe提出・e記録管理システムであるTreeeSを先行導入するとしています。先行導入庁への新規の訴え提起や支払督促の申立てなどには、mintsを使えません。先行導入以外の裁判所がいつTreeeSに移るかは、この記事では扱いません。提出先の裁判所の案内で確かめてください。
図解 5
運用を決めるときの6つの確認
IT化で事務員の仕事が減るとは限りません。紙を扱う作業が、システムへの提出、通知の確認、記録の整理に置き換わります。提出と通知の確認は、期限に直結する作業です。担当者、見る回数、記録の書式を決めておくことが、一番の備えになります。Atrium Legalの機能は機能の紹介ページに、紙の提出方法は裁判所への書類提出 郵送・FAX・持参・オンラインの使い分けにまとめています。

この記事の監修者
弁護士 横田 秀俊
福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所
Atrium Legalは、弁護士 横田秀俊の監修のもとで設計・開発されています。法律事務所の現場で必要とされる機能と操作感を確かめながら、弁護士と事務スタッフの双方が使いやすいツールを目指しています。監修について
※ 弁護士法人横田秀俊法律事務所と、Atrium Legalの販売元(株式会社HMコンサルティング)は別の法人です。
参考にした法令・資料
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この記事は、2026年10月時点の法令・公表資料をもとにした一般的な解説です。個別の事案の判断は、事案の内容に応じて行ってください。