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コラム

弁護士事務所の業務効率化に役立つ情報をお届けします。案件管理や利益相反チェックなど、日々の実務で使えるトピックを掲載しています。

利益相反チェックの受付で聞き取ること

監修弁護士 横田秀俊監修 弁護士 横田 秀俊(福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所)監修者について

予約の電話やフォームで聞くのは、相談者、相手方、関係者の名前と住所、法人なら代表者と親子会社、旧姓、名前の読み、事件の種類です。事務員が聞き取って記録し、受任してよいかの判断は弁護士が行います。この回では、聞く項目と聞き方、記録の残し方、弁護士への引継ぎを、受付の順に書きます。

事務員向け


利益相反チェックの受付で聞き取ること

聞く項目、聞き方、記録、弁護士への引継ぎ

Atrium Legal コラム1 / 5

聞き取りは事務員、受任の判断は弁護士

弁護士法25条は、相手方の協議を受けて賛助し、または依頼を承諾した事件(1号)や、相手方の協議を受けた事件でその協議の程度と方法が信頼関係に基づくと認められるもの(2号)について、弁護士が職務を行うことを禁じています。弁護士職務基本規程27条は、この2つと同じ類型に加えて、受任している事件の相手方からの依頼による他の事件などを挙げています。28条は、受任している他の事件の依頼者や継続的な法律事務の提供を約している者(顧問先)を相手方とする事件、依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件などを挙げています。

この判断は弁護士の仕事です。事務員が「重なっていないから大丈夫です」と答えを出す場面はありません。事務員の役割は、判断に必要な情報を漏れなく聞き取り、照合の結果とあわせて弁護士に渡すことです。

共同事務所では、同じ事務所の別の弁護士が27条・28条で職務を行えない事件は、原則として自分も行えません(職務基本規程57条。職務の公正を保ち得る事由があるときは例外)。弁護士法人の社員等にも同じ趣旨の規定があります(64条)。受付で聞いた情報は、担当予定の弁護士の分だけでなく、事務所全体の台帳と照らす前提で記録します。

規程59条は、共同事務所の所属弁護士に、職務を行い得ない事件の受任を防ぐため、取扱い事件の依頼者、相手方、事件名の記録などの措置をとるよう努めることを求めています(弁護士法人は68条)。受付で聞いた名前を台帳に残す作業は、この記録の入口になります。

チェックの時期の考え方は利益相反チェックはいつ行うかに、表記ゆれへの対処は相手方の表記ゆれで見落とさないためにに書いています。この回は、その手前にある電話やフォームでの聞き取りに絞ります。

図解 2

予約の段階で聞く8項目

  • 相談者の氏名・住所・電話番号
  • 相手方の氏名・住所
  • 関係者(家族、共同相続人、保証人など)
  • 法人なら代表者名と親会社・子会社
  • 旧姓・通称・改名・屋号
  • 氏名の漢字と読み(カナ)
  • 事件の種類(離婚、相続、交通事故など)
  • 相談者と相手方の関係
Atrium Legal コラム2 / 5

予約の段階で聞く項目は8つ

相談者・相手方・関係者

相談者の氏名、住所、連絡先は、予約の連絡先として聞くものです。続けて、相手方の氏名と、分かる範囲の住所を聞きます。相手方の住所が分からなければ、市区町村や勤務先でも構いません。同姓同名の別人かどうかを後で見分ける手がかりになります。

相手方のほかに、事件に関わる人も聞きます。離婚なら配偶者の親や不貞の相手、相続なら他の相続人、貸金なら連帯保証人、交通事故なら運転者と所有者や保険会社といった具合です。相談者が「関係ない人です」と言っても、名前は記録に残します。関係があるかどうかを決めるのは相談者ではなく、弁護士です。

法人の場合は代表者と親会社・子会社

相手方や相談者が会社のときは、会社名だけでなく、代表者の氏名、本店の所在地、親会社と子会社、関連会社を聞きます。過去の依頼者が代表者個人だったり、子会社だったりして、会社名では引っかからないことがあるからです。分からなければ「分からない」と記録し、登記事項証明書や相談者が持参する資料で後から補います。

旧姓・読み・事件の種類

婚姻や離婚で姓が変わった人、通称や屋号で活動している人は、旧姓と通称を聞きます。氏名の読みは、漢字の字体が複数ある名字(髙橋と高橋、渡邊と渡辺など)を見分けるためにも、カナで聞きます。電話口では「どの漢字を書きますか」と聞き、字を説明してもらいます。

事件の種類は、相談の入口を分けるためだけでなく、「過去に同じ相手方の別件を受けていないか」を弁護士が確認するときの目安になります。事件の細かい中身までは、予約の段階で聞き出す必要はありません。

図解 3

受付から弁護士への引継ぎまでの流れ

1予約を受ける相談者・相手方・関係者を聞き取る
2記録する聞いた内容をそのまま台帳に入力
3照合する過去の案件と突き合わせる
4弁護士に渡す照合結果と聞き取りメモを添える
5弁護士が判断受任してよいかを弁護士が決める
Atrium Legal コラム3 / 5

聞き方と書き方で、照合の精度が決まる

聞き方で気をつけることは3つあります。1つ目は、相談の中身に踏み込まないことです。事務員が聞くのは名前と関係であり、事情の詳しい説明は、弁護士が相談に入ってから聞きます。電話口で相談者が事情を話し始めたときは、「詳しくは弁護士がお聞きします。お名前と相手の方のお名前だけ先に教えてください」とさえぎって構いません。

2つ目は、聞いた表記をそのまま書くことです。「たぶんこの字だろう」と推測して直さず、確認した漢字と、聞いただけのカナを分けて記録します。3つ目は、分からない項目を空欄にせず、「不明」と書くことです。空欄では、聞き忘れたのか分からなかったのか、後から区別がつきません。

相談者が相手方の名前を言いたがらないこともあります。その場合は、相手方が分からなければ相談を受けられない事情を伝えます。相談を聞いてしまってから相手方との関係が分かると、断るにしても相談者に不利益が生じます。伝えても答えが得られなければ、そのことを記録して弁護士に伝えます。

聞き取りは3回に分ける

聞き取りの機会は、予約の電話、相談当日の受付、受任の前の3回あります。予約の電話では、前の節の8項目を一通り聞きます。聞き方の例は、「念のため、相手の方のお名前を、漢字とふりがなでお聞かせください」「ご家族や会社など、ほかに関わっている方はいらっしゃいますか」です。

相談当日は、相談票に相手方と関係者の欄を設けて書いてもらい、予約のときに聞いた内容と見比べます。増えた名前があれば台帳に追記し、弁護士に伝えます。受任の前には、相談で新しく出てきた名前がないかを、弁護士に確かめます。

聞き漏らしやすい場面

聞き漏らしが多いのは、相談者が複数人で来るときの同伴者、相手方が個人事業主で屋号を使っているとき、相手方の勤務先が子会社や関連会社のときです。離婚で相手方の親や不貞の相手が後から出てくることもあります。電話で聞けなかった分は、「後ほど確認」と台帳に書いて当日に回し、聞いた時点で書き換えます。「確認」の印を付けたまま残さないようにします。

図解 4

聞き方の違いで残る記録

観点 避けたい記録 残したい記録
相手方 「相手は元夫」 姓名の漢字・読み、住所または勤務先
法人 「A社」 正式名称、代表者、親会社・子会社
不明の項目 空欄 「不明」と記入し、聞いた日時を残す
相談の内容 事情の詳しい経緯 事件の種類と、相談者との関係だけ
Atrium Legal コラム4 / 5

予約を受けた段階で記録した情報は、相談だけで終わった人の分も残します。残す理由と期間の考え方は相談だけで終わった人も記録すべきかに書いています。

図解 5

台帳に残す欄

聞いた日時と人電話・来所の別、聞き取った事務員の名前
相談者氏名・読み、住所、電話番号、旧姓・通称
相手方・関係者氏名・読み、住所または勤務先、相談者との関係
法人の情報正式名称、代表者、親会社・子会社
照合した範囲何で検索し、何を確認したか
未確認の項目「不明」「後ほど確認」と、その後の確認日
Atrium Legal コラム5 / 5

記録を弁護士に引き継ぐときに添えること

照合した結果は、「重なりなし」「重なりあり」の二つだけで渡さず、何を何と照らしたかも添えます。たとえば「相手方の氏名と旧姓で台帳を検索、重なりなし。代表者名は未確認」と書けば、弁護士は何が確認済みで何が未確認かをすぐ把握できます。過去の案件と重なるものが見つかったときは、その案件の事件名と担当弁護士を添えて、すぐ弁護士に渡します。

引継ぎの際は、聞き取った日時と聞き取った人の名前も残します。誰がいつ聞いたかが分かれば、後から内容を確かめたいときに、聞いた本人に尋ねられます。相談の日までに新しい情報(相手方の追加、法人の代表者の変更など)が入ったら、同じ台帳に追記し、弁護士にも伝えます。

聞き取りの項目をそろえる台帳として、無料資料の「利益相反チェック台帳(Excel)」を用意しています。まず紙やExcelで項目を固めたい事務所は、ここから始めても構いません。

Atrium Legalの利益相反チェックは、依頼者・相手方・関係者の氏名、住所、電話番号を入力すると、登録済みの案件と照合します。電話番号は下4桁のような部分入力でも検索でき、代表者・親会社・子会社もあわせてチェックします。漢字・ひらがな・カタカナの違いや「髙橋」「渡邊」のような異体字は自動で正規化してから照合するので、聞き取った表記が台帳と少し違っていても、見落とされにくくなります。「いつ・誰が・何を確認したか」は監査ログに残り、チェックが済めばそのまま案件登録へ進めます。

監修弁護士 横田秀俊

この記事の監修者

弁護士 横田 秀俊

福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所

Atrium Legalは、弁護士 横田秀俊の監修のもとで設計・開発されています。法律事務所の現場で必要とされる機能と操作感を確かめながら、弁護士と事務スタッフの双方が使いやすいツールを目指しています。監修について

※ 弁護士法人横田秀俊法律事務所と、Atrium Legalの販売元(株式会社HMコンサルティング)は別の法人です。

参考にした法令・資料

この記事は、2026年10月時点の法令・公表資料をもとにした一般的な解説です。個別の事案の判断は、事案の内容に応じて行ってください。

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