事件が終わった後の記録整理 保管と廃棄のルールを決める
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更新日:2026年11月2日
事件記録の保管と廃棄について、弁護士職務基本規程18条が求めるのは、秘密やプライバシーに関する情報が漏れないよう注意することです。保管の期間や方法は定めていません。期間が決まっている記録は本人特定事項の確認記録のように一部にとどまるため、残りは事務所が自分でルールを決めることになります。
案件管理
事件終結後の保管と廃棄
期間と方法は事務所が決める。まず決まった期間を洗い出す
規程18条は期間を決めていない。決めるのは事務所
規程18条は、事件記録を保管し、または廃棄するに際して、秘密およびプライバシーに関する情報が漏れないよう注意しなければならないと定めています。期間や方法の記載はありません。
事件が終わっても、秘密を守る義務は終わりません。弁護士法23条は、弁護士であった者にも秘密保持の義務を課しています。規程23条も、依頼者について職務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らし、または利用してはならないと定め、事件の終了を区切りにしていません。さらに、依頼者名簿や事件の台帳のように氏名などで検索できる形で個人情報を持っていれば、個人情報保護法23条の安全管理措置が事務所にかかります。従業者への監督を求める24条も同じです。措置を講じる主体は、保管中も廃棄のときも事務所です。
順序があります。保管期間は、法令や規程で期間が決まっている記録を先に洗い出し、それ以外を事務所の方針で決める順に考えます。会計や税務の書類には別の法令による保存期間があるので、税理士にも確認して表に加えます。
期間が分かっている記録から押さえる 本人特定事項の確認記録は終了後5年
日弁連の「依頼者の本人特定事項等の確認及び記録保存等に関する規程」は、確認が必要になる場面は、基本的に2つです。1つは、法律事務に関連して依頼者の口座を管理する、または金銭や有価証券などの資産を預かって管理する場合です(資産の合計が規則で定める金額以上のものに限る)。もう1つは、不動産の売買、会社の設立・出資、合併、信託の設定、会社の買収・売却といった取引を依頼者のために準備・実行する場合です。このほか、犯罪収益の疑いがある場合なども確認の対象になります。
この規程の5条は、確認記録と取引等の記録を、資産管理行為等または取引等の終了後5年間保存しなければならないとしています。確認記録とは、確認した事項の記録や、依頼者から受けた書類の写しなどです。すべての事件が対象ではありません。対象になる事件では、終了した日から保存の期限が走り始めます。
たとえば、A社の不動産売買を準備・実行した事件が2026年3月31日に終了したなら、確認記録は少なくとも2031年3月31日までは保存し、この日付を台帳の保存期限に入れます。
同じ規程の2条4項は、5年以内に確認済みの依頼者について原則として再確認を要しないとしています。これは確認を省略できる範囲の話で、記録の保存期間とは別の規定です。また、同規程11条により、毎年6月30日までに前年度(4月1日から3月31日まで)の状況を所属弁護士会へ年次報告します。対象事件の終了日と保存期限を一覧にしておくと、この報告の準備にも使えます。
預り金は、職務基本規程38条が、自己の金員と区別して預り金であることを明確にする方法で保管し、その状況を記録するよう求めています。日弁連の預り金等の取扱いに関する規程もあり、2025年6月13日の定期総会で一部改正が議決されました。記録の保存期間をルールに入れるときは、現行の条文を日弁連の関係法規集で確かめてからにします。
図解 2
規程18条と確認記録の規程
| 観点 | 職務基本規程18条 | 本人特定事項等の確認・記録保存規程 |
|---|---|---|
| 定める内容 | 保管・廃棄の際に秘密が漏れないよう注意する | 確認記録と取引等の記録を保存する |
| 保存の期間 | 定めなし | 終了後5年間(5条) |
| 対象 | 事件記録一般 | 資産管理や特定の取引を行う場合 |
事件の終結時にすることを、順番に決めておく
終結時の手順は、一覧にして決めておきます。職務基本規程には、委任の終了時の規律として、処理結果の説明(44条)と預り金等の清算・返還(45条)があります。この2つを先頭に置いた並びが自然です。手順は5つです。
- 依頼者に処理結果を説明し、預り金等を清算して返還する
- 依頼者から預かった原本を返し、返却日と受領を記録に残す
- 事件記録を整理し、保管するものと不要なものを分ける
- 保存期限を決めて、台帳に入れる
- 事件の状態を「終結」にして、保管場所へ移す
原本の返却は、後回しにするほど事務所の預かり期間が延びます。終結の連絡と同時に返し、受領を記録に残すようにしておけば、保管の責任を負い続ける書類が減ります。入金や預り金を案件ごとに記録していれば、1番の清算も確認しやすくなります。この記録に対応した案件管理ツールの機能は機能一覧にあります。
図解 3
終結時にすること
紙と電子では、置き場所と鍵が違う
紙の記録は、施錠できる書庫に事件ごとの箱を置き、箱の番号を台帳に記録します。持ち出しの記録も付けます。電子の記録は、フォルダのアクセス権限、バックアップ、パソコンの紛失への備えが決め手になります。置き場所ごとの注意点は依頼者情報をどこに置くかで整理しています。
終結した事件のデータを、進行中の事件と同じフォルダに置いたままにしている事務所は少なくありません。そうすると、事件に関係のない職員まで終結事件を開ける状態が続きます。終結用のフォルダを分け、権限を絞っておけば、閲覧できる人を減らせます。職務基本規程19条は、事務職員が業務に関して知り得た秘密を漏らし、または利用することのないよう、弁護士に指導と監督を求めています。終結事件の権限を絞ることは、事務職員を通じた漏えいを防ぐ手立てにもなります。
紙をスキャンして電子化した場合は、紙の扱いを決めておきます。原本は返却し、写しは保管するか廃棄するかを、事件の終結時に決めます。
図解 4
ルールに入れる項目
- 法令・規程で期間が決まった記録の洗い出し
- 記録の種類ごとの保存期限
- 紙と電子それぞれの保管場所と権限
- 廃棄の方法と廃棄の記録
- 台帳に残す項目と残す期間
廃棄は、方法と記録までをルールにする
廃棄にも手順があります。紙は、シュレッダーにかけるか、溶解処理の業者に任せます。業者に任せる場合、その取扱いが個人データの取扱いの委託にあたるかは委託の内容によります。個人情報保護法25条は、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を求めているので、契約の内容を確かめ、処理が済んだ証明を受け取る運用にしておくと安心です。電子データは、ファイルを消しても、バックアップやフォルダの履歴、ごみ箱に残ることがあります。消したつもりで残る。電子データの落とし穴です。どこまで消せば廃棄とするかを、事務所のバックアップの仕組みに合わせて決めます。
廃棄の記録には、日付、対象事件を識別する番号、方法、担当者を書きます。当事者の氏名や事件の中身は書き足しません。廃棄の記録が新たな秘密の置き場になっては、本末転倒です。
書類の中身を廃棄した後も、台帳には必要最小限の行を残すかどうかを決めます。職務基本規程59条は、共同事務所の所属弁護士に、取扱い事件の依頼者、相手方、事件名の記録その他の措置をとるよう努めることを求めています。目的は、職務を行い得ない事件の受任の防止です。弁護士法人については68条が同様の努力義務を定めます。終結した事件の当事者名が台帳になければ、後日、同じ相手方から別件の相談が来たときに、過去の事件との関係を調べる入口がなくなります。この行にも個人情報が含まれます。どの項目をいつまで残すかも、ルールに含めます。
図解 5
終結後も台帳に残す項目
終結した案件を、検索できる台帳として残す
書類の中身は期限が来たら廃棄しても、事件の台帳の行は残す。この形なら、小さな事務所でも回せます。残すのは、事件名、依頼者、相手方、受任日と終結日、保存期限、保管場所に絞ります。
Atrium Legalの案件管理ツールは、案件一覧をカード表示とテーブル表示で見られ、案件名、依頼者、相手方、メモ、チャットを横断する全文検索ができます。終結した案件のページを消さずに残しておけば、数年前の事件でも、相手方の名前から探し当てられます。経費・報酬・入金・預り金を案件ごとに記録できるため、清算の確認にも役立ちます。役割ごとの操作権限を設定できるので、終結事件を見られる人を限る運用とも合います。
利益相反チェックシステムは、新規相談で入力した情報を過去の案件データやブラックリストと照合します。終結した事件の当事者を台帳に残す意味は、ここにもあります。保管と廃棄のルールを決めたうえで、記録の入口になる台帳を整えておく。その手順を、機能一覧で確かめてみてください。
終結した案件を検索できる形で残すには、案件管理の案件一覧と全文検索が使えます。データは事務所の共有フォルダに保存されます。

この記事の監修者
弁護士 横田 秀俊
福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所
Atrium Legalは、弁護士 横田秀俊の監修のもとで設計・開発されています。法律事務所の現場で必要とされる機能と操作感を確かめながら、弁護士と事務スタッフの双方が使いやすいツールを目指しています。監修について
※ 弁護士法人横田秀俊法律事務所と、Atrium Legalの販売元(株式会社HMコンサルティング)は別の法人です。
参考にした法令・資料
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この記事は、2026年10月時点の法令・公表資料をもとにした一般的な解説です。個別の事案の判断は、事案の内容に応じて行ってください。