依頼者情報をどこに置くか 事務所のデータ管理と守秘義務
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依頼者の情報をどこに置くかについて、弁護士職務基本規程や個人情報保護法は特定の場所を指定していません。求めているのは、秘密が漏れないよう注意し、必要かつ適切な安全管理の措置を講じることです。パソコン本体、所内サーバー、クラウドストレージ、外部の業務サービスの4つについて、確かめる点と事務所のルールの作り方を整理します。
データ管理
依頼者情報をどこに置くか
守秘義務と安全管理措置から置き場所を選ぶ
守秘義務は、漏らさないことに加えて、利用しないことまで求めている
弁護士法23条は、弁護士または弁護士であった者が、職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負うと定めています。弁護士でなくなった後も義務は続きます。弁護士職務基本規程23条は、依頼者について職務上知り得た秘密を、正当な理由なく他に漏らし、または利用してはならないとします。禁じられているのは漏らすことだけではなく、自分の別の目的に使うことも含みます。刑法134条1項には、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らした場合の罰則があり、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。
保管と廃棄については、規程18条が、事件記録を保管し、または廃棄するときは、秘密およびプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなければならないとしています。事務職員については、規程19条が、自らの職務に関与させた事務職員等が秘密を漏らしたり利用したりしないよう、指導し監督することを求めています。誰にどの情報を見せるかの設定は、この指導監督を実際に行う手段の一つです。
規程18条は、保管の期間や方法を定めていません。置き場所は事務所が自分で選び、なぜそれで足りるのかを説明できる状態にしておく部分です。
個人情報保護法でも、事務所が安全管理を担う
個人情報保護法16条2項は、個人情報データベース等を事業の用に供している者を個人情報取扱事業者と定義し、除外されるのは国の機関、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人の4類型だけです。弁護士や法律事務所はこの除外に含まれません。依頼者名簿や事件管理システムのように、氏名などで検索できるよう体系的に構成した個人情報の集合物を業務に使っていれば、その事務所は個人情報取扱事業者に当たります。
そこで関わるのが、23条、24条、25条です。23条は、取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損の防止その他の安全管理のために、必要かつ適切な措置を講じることを求めます。24条は従業者への必要かつ適切な監督を、25条は個人データの取扱いを委託する場合の委託先への必要かつ適切な監督を求めています。条文は措置の内容を細かく並べていないので、事務所の規模や扱う情報に見合う中身は、事務所が自分で決めることになります。
2026年7月に、個人情報保護法の改正法が公布されました。施行は段階的です。本記事は現行の条文によっており、23条から25条の文言は、2028年7月16日施行分の版でも現行と同じです。
図解 2
根拠になる条文
置き場所ごとに、確かめることが違う
置き場所は4つに分けて、それぞれの弱い点から見ていきます。
パソコン本体
手軽ですが、紛失、盗難、故障、持ち出しにそのままつながります。確かめるのは、起動時のログイン、画面ロック、ディスクの暗号化、バックアップを誰が取っているかです。個人のパソコンに事務所のデータが混じる運用では、退職や機種変更のときにデータを消す手順も決めます。
所内のファイルサーバー
事務所の中にあり、アクセス権限を細かく設定しやすい置き場所です。その反面、機器の保守やOSの更新、バックアップは事務所の仕事になります。停電、故障、事務所への侵入で失う危険があるため、別の場所に複製を持つ方法も考えます。
クラウドストレージ
どこからでも使え、共有も簡単です。その分、共有リンクの設定を誤ると、意図しない相手が見られる状態になります。共有範囲の初期設定、退職者のアカウントの停止、サービス側の保存場所と利用規約、契約が終わったときのデータの扱いを確かめます。個人データの取扱いを委託する形になる場合は、25条の監督が問題になります。
外部の業務サービス
案件管理など、事業者のサービスに事件の情報を入力する形です。データは事業者の側にあるので、管理体制は契約書や規約を通じて確かめるしかありません。保存場所、事業者の従業員がデータを見られる範囲、障害時の復旧、解約後のデータの返還や削除が確認事項です。クラウド型とデスクトップ型の違いは案件管理ソフトの選び方でも整理しています。
図解 3
置き場所ごとに確かめること
| 置き場所 | 主な弱点 | 確かめること |
|---|---|---|
| パソコン本体 | 紛失・盗難・故障 | ログイン、暗号化、バックアップ |
| 所内のファイルサーバー | 保守・復旧は事務所の仕事 | 権限設定、別の場所の複製 |
| クラウドストレージ | 共有設定の誤り | 共有範囲、退職者のアカウント、規約 |
| 外部の業務サービス | 管理体制が外から見えにくい | 保存場所、閲覧範囲、解約後の削除 |
権限、バックアップ、紛失への備えは、置き場所によらず決める
アクセス権限は、役割ごとに見せる範囲を決めます。全員がすべての事件を見られる状態は、人が増えるほど説明しにくくなります。退職や異動のときに権限を外す手順も、書いておきます。法律太郎弁護士の事務所で事務員のCさんが退職するなら、共有フォルダの権限、クラウドストレージのアカウント、貸与したパソコンのデータを、退職日までに順に確かめる手順です。
バックアップが要です。誰が、どこに、どの頻度で取り、いつ戻せるのかを決めます。取っているだけで、戻せるかを確かめていないバックアップは当てになりません。バックアップにも依頼者の情報が入っているため、その保管場所も同じ水準で管理します。
端末の紛失に備えて、画面ロック、暗号化、遠隔で消去できる設定があれば有効にしておきます。端末に置くデータの範囲を絞っておけば、紛失したときに何が入っていたかを答えやすくなります。廃棄も同じです。規程18条は廃棄の場面でも情報が漏れないよう注意を求めているので、パソコンや外付けディスクを手放すときのデータ消去の手順を決めておきます。
図解 4
置き場所によらず決めること
- 役割ごとの見せる範囲と、退職時の権限停止
- バックアップの担当・頻度・戻せるかの確認
- 画面ロックと暗号化、遠隔消去の設定
- 端末や外付けディスクを手放すときの消去手順
- バックアップの保管場所の管理
データを事務所の手元に置くAtriumの設計と、その限界
Atrium Legalは、事件のデータを事務所内の共有フォルダに保存します。販売元のサーバーなど外部には預けず、外部クラウドへの送信もしません。専用サーバーは不要です。共有フォルダには、OneDrive、Dropbox、Google Driveの共有フォルダやファイルサーバーを選べます。フォルダのアクセス権限はWindowsやMacのものをそのまま使い、バックアップの方法と保管期間は事務所の方針で選びます。アプリ内では役割ごとの操作権限を設定でき、利益相反チェックでは監査ログに、いつ・誰が・何を確認したかが残ります。
図解 5
事務所のルールの作り方
ただし、置き場所を事務所の手元にすることと、守秘義務を果たせていることは別の話です。共有フォルダにクラウドストレージを選べば、先に挙げた確認事項は事務所の宿題として残ります。バックアップを取る仕組みと、取れているかの確認も事務所が担います。アプリを削除しても共有フォルダのデータは残るので、データの扱いは最後まで事務所の管理下にあります。
置き場所、権限、バックアップ、紛失時の対応、廃棄の5項目を、1枚の書面に書き出すところから始めてください。短くて構いません。書いてあれば、事務員にも説明でき、見直しもできます。Atriumのデータの考え方はセキュリティの考え方に、細かな疑問はよくある質問にまとめています。

この記事の監修者
弁護士 横田 秀俊
福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所
Atrium Legalは、弁護士 横田秀俊の監修のもとで設計・開発されています。法律事務所の現場で必要とされる機能と操作感を確かめながら、弁護士と事務スタッフの双方が使いやすいツールを目指しています。監修について
※ 弁護士法人横田秀俊法律事務所と、Atrium Legalの販売元(株式会社HMコンサルティング)は別の法人です。
参考にした法令・資料
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この記事は、2026年10月時点の法令・公表資料をもとにした一般的な解説です。個別の事案の判断は、事案の内容に応じて行ってください。