弁護士の利益相反とは 職務基本規程27条・28条を実務目線で整理
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弁護士の利益相反は、法律である弁護士法25条と、弁護士職務基本規程27条・28条の二層に分けると整理しやすくなります。相手方から先に相談を受けていた場合、受任中の事件の相手方から別件を頼まれた場合、依頼者どうしの利害が対立する場合の3つを当てはめ、同意があれば職務を行える類型と、同意があっても行えない類型を区別して示します。
利益相反
利益相反は法律と規程の二層で見る
弁護士法25条と職務基本規程27条・28条を場面に当てはめる
法律の線と規程の線は、同意の扱いが違う
まず法律の側からです。弁護士法25条は、弁護士が職務を行ってはならない事件を1号から9号まで定めています。6号から9号は弁護士法人に関係する号で、同意によって例外になるのは3号と9号だけであり、ほかの号に同意による例外はありません。
規程は別の層です。職務基本規程27条の1号から4号は、25条の1号から4号と同じ趣旨の定めです。5号は、25条が仲裁人として取り扱った事件に限るのに対し、規程は調停や和解斡旋などの裁判外紛争解決手続の手続実施者まで広げています。27条で同意による例外があるのは3号だけです。28条には25条に対応する条文がなく、規程が加えた類型で、号ごとに同意をする人が決まっています。
弁護士法人では、社員や使用人である弁護士に加えて法人自身にも制限があり、弁護士法30条の18と規程63条から66条が定めています。この記事では、弁護士個人が受任する場面を中心に見ていきます。
法律の線を越えると、手続の場面でも問題になります。最高裁は、25条1号に違反する訴訟行為について、相手方当事者がその排除を求める申立権を持つと判断しています(最一小決平成29年10月5日)。
典型的な類型を、同意の扱いとあわせて並べると次のとおりです。
| 類型 | 主な根拠 | 同意による例外 |
|---|---|---|
| 相手方の協議を受けた事件(賛助、依頼の承諾、信頼関係に基づく協議) | 弁護士法25条1号・2号、規程27条1号・2号 | なし |
| 受任中の事件の相手方からの別件の依頼 | 弁護士法25条3号、規程27条3号 | 受任中の事件の依頼者の同意 |
| 受任中の依頼者や顧問先を相手方とする事件 | 規程28条2号 | 依頼者と相手方の同意 |
| 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件 | 規程28条3号 | 依頼者と他の依頼者のいずれもの同意 |
図解 2
類型ごとの根拠と同意の扱い
| 類型 | 主な根拠 | 同意による例外 |
|---|---|---|
| 相手方の協議を受けた事件 | 弁護士法25条1号・2号、規程27条1号・2号 | なし |
| 受任中の事件の相手方からの別件 | 弁護士法25条3号、規程27条3号 | 受任中の事件の依頼者の同意 |
| 受任中の依頼者・顧問先が相手方 | 規程28条2号 | 依頼者と相手方の同意 |
| 依頼者どうしの利益が相反 | 規程28条3号 | 依頼者と他の依頼者のいずれもの同意 |
相手方から先に相談を受けていたら、受任しなくても制限が残りうる
Bさんが離婚について法律太郎弁護士に相談し、事情を詳しく話して進め方の助言を受けたものの、依頼には至らなかったとします。数か月後、Bさんの配偶者のCさんが、同じ離婚事件の代理人を頼みに来ました。受けてよいでしょうか。
答えは条文の言葉にあります。
25条1号は、相手方の協議を受けて賛助し、またはその依頼を承諾した事件を対象にします。2号は、相手方の協議を受けた事件で、協議の程度と方法が信頼関係に基づくと認められるものです。規程27条の1号・2号も同じ内容です。条文が見ているのは依頼を受けたかどうかではなく、協議を受けたかどうかです。受任に至らなかった相談でも、中身と程度によっては対象になりえます。
どこから「賛助」や「信頼関係に基づく」協議に当たるのかは、条文だけでは線を引けません。協議の内容と進み具合を見て、個別に判断することになります。確かなのは一つです。この2つの号に、同意による例外はありません。Cさんが望んでも、Bさんが了解しても、扱いは変わりません。
この類型は、受任するかどうかを考える前の、相談を聞いた時点で問題が始まります。名前の照合を相談の内容に入る前に済ませる理由はここにあります。順序は照合が先です。段階ごとの進め方は利益相反チェックはいつ行うかで書いています。
図解 3
相談だけで終わっても残る制限
受任中の事件の相手方や、顧問先が相手になる依頼
場面は二つあります。法律太郎弁護士が、A社から貸金返還請求を受任しているとします。そこへ相手方のDさんが、自分の相続の件で依頼したいと訪ねてきました。受任している事件の相手方からの依頼による他の事件にあたり、25条3号と規程27条3号の問題です。受任している事件の依頼者、つまりA社の同意があれば例外になります。A社が了解しなければ、Dさんの依頼は受けられません。同意をとる相手を取り違えないことが肝心です。
規程28条2号は範囲が広くなります。受任している他の事件の依頼者、または継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件を対象にします。E社の顧問をしている弁護士に、Fさんが「E社に未払いの代金を請求したい」と持ち込む場面です。例外になるのは、依頼しようとするFさんと、相手方になるE社の双方の同意があるときです。顧問契約は事件として台帳に載らないことがあります。顧問先の一覧も照合の対象です。
同意が例外の条件になる類型では、誰の同意が必要なのかを先に特定し、同意を得た日と方法を記録に残しておきます。同意を求めるときに何をどこまで伝えるかは、守秘義務との関係で慎重な判断が要ります。
依頼者どうしの利害が対立するおそれがあるとき
遺産分割で、兄のGさんと弟のHさんが、そろって法律太郎弁護士に依頼したいと来たとします。二人の利益が相反するなら、28条3号により職務を行えません。例外になるのは、依頼者と他の依頼者のいずれもの同意があるときです。Gさんだけの同意では足りません。同意の組み合わせは類型ごとに違います。
同一の事件に複数の依頼者がいて、相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、受任に当たって、依頼者それぞれに、辞任の可能性その他の不利益を及ぼすおそれがあることを説明しなければなりません(規程32条)。説明は受任時です。受任後に現実の対立が生じたら、規程42条により、依頼者それぞれに速やかに事情を告げ、辞任その他の適切な措置をとります。
28条にはほかに、相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹または同居の親族である事件(1号)と、依頼者の利益と弁護士自身の経済的利益が相反する事件(4号)があります。どちらも依頼者の同意が例外の条件です。42条が働くのは、GさんとHさんのように同一の事件で複数の依頼者から受任したあと、依頼者相互間で利害の対立が現実になった場面です。
図解 4
規程28条の4つの類型
条文を覚えるより、照合の材料を一か所に集める
結局のところ、ここまでの類型に共通するのは、相手方、過去の相談者、受任中の依頼者、顧問先が誰かを把握していなければ、条文に当たるかどうかを考える入口にも立てないことです。記憶に頼る運用は、事件が増えるほど、年数がたつほど危うくなります。記憶には限りがあります。そこで手順にします。受付の時点で、相談者、相手方、関係者の氏名・名称と、受任中の依頼者や顧問先との関係を集め、過去の記録と照らす流れを決めておきます。照合は毎回行い、結果と判断を残します。この繰り返しが、法律と規程の線引きを、日々の受付の作業に落とし込むことになります。
図解 5
受付の段階で集める情報
- 相談者の氏名・名称
- 相手方の氏名・名称
- 配偶者や代表者などの関係者
- 受任中の依頼者との関係
- 顧問先との関係
- 過去の相談や受任の有無
Atrium Legalの利益相反チェックシステムは、新規相談の際に依頼者・相手方・関係者の情報を入力すると、過去の案件データとブラックリストに照らし、結果を「問題なし」「要確認」「危険」の3段階で表示します。代表者・親会社・子会社もあわせて調べ、確認が済めばそのまま案件登録に進めます。
ただし、照合の結果が出ても、25条や27条・28条に当たるのか、同意が要るのか、誰からどう得るのかを決めるのは弁護士です。道具に任せるのは、判断の材料を手元に出すところまでです。3ツールの内容と購入は商品ページにまとめています。

この記事の監修者
弁護士 横田 秀俊
福井弁護士会所属/弁護士法人横田秀俊法律事務所
Atrium Legalは、弁護士 横田秀俊の監修のもとで設計・開発されています。法律事務所の現場で必要とされる機能と操作感を確かめながら、弁護士と事務スタッフの双方が使いやすいツールを目指しています。監修について
※ 弁護士法人横田秀俊法律事務所と、Atrium Legalの販売元(株式会社HMコンサルティング)は別の法人です。
参考にした法令・資料
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この記事は、2026年10月時点の法令・公表資料をもとにした一般的な解説です。個別の事案の判断は、事案の内容に応じて行ってください。